<2002.7.27> 往時の渓にて
・・・・・快晴・・・・・

”暑いぞー・・・!。”

何だこの暑さは・・・・・・・草付きの多いこの渓で

藪漕ぎの時など 東北育ちの私には 刺すように

照りつける日差しを受けると まるで拷問に掛け

られた罪人のようだ。

”ドボン!”
 と谷水に沈み 体を冷やしながら

遡行を続けて行く。

”アーア!! もう早く切り上げて キンキンに

冷やした 泡立ちジュースでもやりてえ・・。”

つい愚痴のひとつも 出てしまうもんだ。


この地域は 全体の山肌の脆さに よく崩落が

起きる地で 落差5m程の堰堤も数年前起きた

大雨による土石流で ひと跨ぎ出来てしまう姿に

様変わりしてしまう。

先日台風6号の追い討ちに とう々其の名残

さえ 見つける事が出来なくなってしまった。

この日の一番岩魚

支流の渓相

流れの何処にでも群れていた岩魚にとっても 其の影響は小さくなかった様で 以前0.6号のハリスを

苦も無く振り切り 持ち去って行ったヤツらは もう気配さへ感じさせても呉れない。

天然魚のみのこの渓にも 桃源郷と呼べる時代は有った! 良形の拾い釣での遡行にても 1〜2時間も

すると 持ち切れなくなった釣果に 早々と切り上げ 一杯やって 里の民家が起き出す頃帰路へと付く

今ではもう夢のような釣り場でも有った。

そして その下流域には二十数年前放たれた

アマゴの稚魚が 先住のヤマメに取って代わり

竿も届かぬ大場所では 40cmを越える物が

悠然と表層を泳ぐ姿を 何度も確認出来た。

幾多の想い出を創ってくれた この流れも

そんな昔話を 嘲笑うかの様に 悲惨な姿と

変わり果て あれ程流れへ溢れた岩魚も

もう其の影を見掛ける事さへ難しく つい

感傷的に成ってしまう。



各流れは 重機が走り回り 谷を削る

大規模な冶山工事が進み 

・・・”工事中 立入禁止”・・・

の 看板が目立つように成って来た。

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

岩魚は黒っぽい

ヤマメ域だが釣れるのはアマゴ

”未だ居るのかな?” ”オー やって見ろよ!” 良く大岩魚に出会え 想い出を呉れた堰堤下で 

竿を出すのを相棒へ促す 私は木陰で見物人と決め込む! 3m四方程に小さくなった落ち込みで

打ち込んだ仕掛けは 流れのブッツケ辺りで ”グイ!”と目印が引き込まれる 中々良い形のようだ

傍観者を決め込んでいた私は 拍手と声援を相棒へと送る・・ ”ン 苦戦しとるか?””シャーナイ応援

行ったるか!”
 重い腰を上げる頃 岩魚は岸へと引きずり上げられた 其れは黒っぽい尺上のヤツで

スレ掛りしており 其の抵抗の強さに頷く。  ”まだ居たな!”  ”ウン ウン!”  相棒の呟きに

短く頷き 飽きる事無くこの谷らしい岩魚を見続けた。

                                                       OOZEKI